食のレーダー
Vol.9 ”日配弁当”の新たな挑戦

岩田将東氏 株式会社い和多
取締役営業企画室長
岩田将東氏




FP:「い和多」さんでは、業界で先駆けてHACCPの導入を行い、また東京都内の日配弁当業界では初めての災害救援施設に指定されるなど、昨今の衛生管理に対する食産業全体の流れや、海外の震災の報道も記憶に新しい中で非常に興味深い訳ですが、まず、「お弁当」、そして「日配弁当」の持つ役割についてお話を伺いたいと思います。

岩田:今の社会において、「お弁当」の持つ意味が昔と大きく変わってきているという点が挙げられます。
まず母親の手作り弁当が少なくなっているということです。この要因は、女性の職場進出が伸びたため、母親がお弁当を作る手間や時間が取れなくなり、子供がコンビニで買ったり、母親自身が仕事の帰りに弁当屋や惣菜店で購入するように、「お弁当」の提供方法や利用方法が変わってきました。
そのような中で、我々弁当を供給する者としては日常安心して飽きずに食べられるお弁当づくりが必要ではないかと思います。製品の安全性はまず優先すべきことですが、メニューの組立においても、「自分たちが毎日子供のために作る食事」というような母親の立場に立った感覚、いわゆる「まごころ」を持つことが必要だと思います。日本経済が発展中であった頃は、日配弁当はただの「まかない食」とされており、悪い言い方をすれば「ただ腹に入ればいい、安く済ませられれば良い」というイメージでした。それから最近のグルメ志向の強まりに比例して、おいしさが追求されるようになり、弁当単価も上がってきましたが、「少し高額でもおいしいものを食べたい」というように日配弁当に対する価値感も変化してきように思います。
株式会社い和多は、日本橋で繊維問屋を主な顧客とした弁当給食からスタートし、安心・安全な食事を提供し続け今年で34年目を迎えます。昔は、安さとボリューム感が求められており、冷凍食品を使った大量調理システムを重視してきましたが、現在は和食、洋食、中華などのメニューバリエーションの豊かさと、その全てのメニューに「本格的なおいしさ」が求められています。ですから我々は外食店で食べる味と同じグレードのメニュー開発に一生懸命取り組んでおります。

FP:日配弁当市場全体の動きはどうでしょうか?

岩田:この業界の対象客層は、80%が企業や団体など法人が占めています。特に、最近の傾向では自社ビルでなくテナントとして入居するケースも多く、はじめから社員食堂がなかったり、それを設けるスペースが確保しづらくなったことから、私たち日配弁当に対するニーズも徐々に上向きになっています。とくに日配弁当の特徴である「容器を回収する」ということは、ゴミ削減にもつながり、環境問題にも良い結果をもたらすということで、奨励する企業も徐々に増えてきました。さらに都心部では、定食屋のような食堂の数も減ってきているため昼食をとる場所に困った“昼食難民”も増えています。このような社会の流れは我々にとっては追い風になってくると思います。


お弁当 お弁当 お弁当


FP:現在、コンビニの弁当売り場などはオフィス街では非常に需要が多く、賑わう様子が見られますが、「日配弁当」のセールスポイントと、また残された課題はどのような点なのでしょうか。

岩田:下請けの弁当工場で作られたさまざまな流通経路をたどって店頭にならぶコンビニ弁当との大きな違いは、「われわれはメーカーで、日配弁当はメーカー直販である」ということ。ですからわれわれは常に安全に対しダイレクトに責任を持ちながらお手元まで届けます。「無添加」に出来るのも工場とお客様が直結しているからこそ可能なのです。
そして「デリバリーされる」のも大きなセールスポイントでしょう、近年の商業施設の大型化に伴い、実質的な食環境はますます悪化すると思われます。毎日毎日何百万食という日配弁当がコーヒー一杯にも満たない価格で届けられ、そして容器は回収されます。回収された容器は洗浄、消毒され翌日また使われます。もし、仮に日配弁当が使い捨て容器だったら日本はあっという間にゴミでうめつくされるでしょう。
このようなまるでデンマークなみのゴミを出さないシステムに40年も前からわれわれの業界は取り組み実行しています。この事はもっと大きく取り上げられるべきだと思いますし、他の業界も見習うべきでしょう。そして課題についてですが、全体としての市場は大きくなると思います。しかしトヨタ自動車の「カフェテリア プラン」に代表されるようにわれわれの対応は今後ますます細分化していくでしょう。いわゆる「個食」に対してどう対応するか、またその他に業界の枠を越えて外食や給食業界との連携も考えられます。顧客の求めるものをどう実現するか、今までになかった発想こそ取り組まなければいけない大きな課題でしょう。

FP:その具体的な解決策として、御社ではインターネットを利用したお弁当の受注システムも導入されているとのことですが…。

岩田:すでに文房具の注文システムには、インターネットでカタログを見て、オーダー、翌日には品物が届けられるというシステムが構築されています。たまたまそこの社長にお会いする機会があり、「文具と弁当」まったく畑のちがう商品ですがエンドユーザーは一緒ですねと話したところ賛同していただき、文具と一緒に弁当をのせていただけるようになりました。今はまだ経費で使える「会議費」だけですが、来年度には企業内個人に対してのシステムを自社で立ち上げる準備をしています。


ジェットオーブン・ロングシリーズ ジェットオーブン・ロングシリーズ
5000食/日の調理施設の中心に配置された
コンベア式焼き物機「ジェットオーブン・ロングシリーズ」。



FP:生産設備に対する今後の展望をお聞かせ願えますか?

岩田:業界の中には工業生産性的に一カ所で5万食も生産できる企業もあり流れとしては省略化するための機械化、システム化がされています。しかし機械にすると大味になってしまう。味を追及するなら大システムにはするべきではないと思います。そんなジレンマの中、調理設備は経営を左右されていくものですので良いものを導入しなくてはなりません。そして各配送エリア内で品質を追及しながら手作り感を生かし、おいしさを提供していくことがベストだと思います。
現在の当社の顧客層は法人・官公庁・特定団体、中央卸売市場などですが、目標として2002年までは2万食の供給能力を有することを計画しています。

FP:食品の安全性、いわゆる衛生管理についての取り組みはどうでしょうか?

岩田:もちろん、この問題についても積極的に取り組んでいます。当社では何年か前から消費者の衛生への関心の高まりから、基本的な衛生対策はおこなってきましたが、今年葛西に完成した4つ目の最新生産設備へのHACCP導入は、やはり一昨年に起きたO-157問題が大きな要因になっていますね。当社ではこの施設を計画段階からHACCP導入をベースとして完成させました。

FP:「い和多」のHACPPシステム構築に際しての取り組み内容、また日常のHACCPに沿った調理作業の管理手法についてお聞かせください。

岩田:おおまかにお話しすると、基本的な衛生管理システムを軸に、厨房に入る際の足洗い槽の完備、食材の納品・洗浄・保管の徹底、調理・配送時の細かな衛生管理マニュアルの設定、洗浄後の弁当容器の紫外線照射保管室での管理など、微生物レベルから徹底した衛生管理を行います。

FP:では、冒頭でも触れた「い和多」が災害救援施設となった経緯とその具体的な対応についてお聞かせ下さい。

岩田:この江戸川臨海町は、流通業務地区であるため、阪神淡路大震災級の被害の際には、流通の利便性、地の利を生かして弁当を炊き出し供給することを東京都と取り決めたのです。このような時には、この葛西臨海工場をフル稼働させ、江戸川区内の被災住民、特に年少児やお年寄りに対して一日1万食の弁当を供給します。そのためにも、この葛西のように流通経路が充実していることが重要視され、認定されたのです。

FP:「日配弁当は幼稚園から高齢者の宅配まで、人生全般を通じてかかわってくるものであり、私はこの仕事に“誇り”を感じます」と語られる岩田さん。これからも前向きに日本の弁当の進化に取り組まれる「い和多」のさらなる発掘をお祈りしています。


コンビオーブン
「い和多」の生産設備の中でも毎日フル回転しているコンビオーブン。芯温コントロール機能もあり、HACCPの管理では非常に有効だ。
HACCP書類




株式会社い和多(葛西店)
今年6月に竣工・稼働開始した葛西店
今年6月に竣工・稼働開始した葛西店

東京都江戸川区臨海町3-3-8
TEL.03-3680-3911

他に日本橋店、六郷店、加須店、かんぎ新川2丁目店、かんぎ新川1丁目店、かんぎ三田店がある。



1.食の仕掛人たち
「コンセプトは『豊かで楽しいもう一つの家庭の食卓』。
“居食屋”という独自の業態で日本人の新しい食のシーンを仕掛ける。」
INDEX
Vol.9 目次へ
[ ワタミフードサービス株式会社 代表取締役社長 渡邉 美樹氏 ]
2.季節のメニューアイデア
「秋の料理」
[ ホテル グランパシフィック メリディアン ] [ 広東料理 楼蘭 ] [ フレンチレストラン エピス ]
3.食のレーダー
「Vol.9 ”日配弁当”の新たな挑戦」
[ 株式会社い和多 ]


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