お客様事例特別養護老人ホーム ふしき苑

地域介護の基盤を守るため、ニュークックチル導入を決意

「ふしき苑」で導入いただいた再加熱カートとドッキングステーション

富山県高岡市の社会福祉法人伏木会は、特別養護老人ホームの厨房を改装して、朝150食、昼190食、夜150食の食事提供を、ニュークックチルシステムによる運営に切り替えました。主菜と副菜を保存・再加熱し、特別養護老人ホームと、徒歩圏内にある社会福祉施設で提供しています。少子高齢化に伴う厨房の人手不足。理事長は、その長期化を前提に、労務環境を改善しながら、限られた人数でも運営可能な体制を整えることが、地域介護の中核施設を持続的に運営するために欠かせないと判断なさったそうです。

fujimakの調理アドバイザーが現場をサポート

「主菜の治部(じぶ)煮も、形崩れすることなく、きちんと仕上がっていました。これまで、どうもありがとうございました。今後、さまざまなメニューを提供なさるなかでご質問がございましたら、いつでもご連絡ください」-。2023年8月末、富山県高岡市の特別養護老人ホーム「ふしき苑」での現場最終ミーティングの一コマです。ふしき苑を運営する社会福祉法人伏木会がニュークックチルシステムを導入なさるのにあたって、fujimakカスタマーサポート部の管理栄養士2人が施設にお邪魔し、厨房に設置した機器を使って、入所者様に提供するメニューのテストを現場の皆さまと重ねてきました。3拠点ある施設のうち、ふしき苑と、徒歩圏内にあるもう一つの施設で、9月からニュークックチルシステムによる食事提供が始まります。食数は、朝150食、昼190食、夜150食です。

ふしき苑の調理スタッフを束ねる副主幹で管理栄養士の能澤由香様は、「聞いたことのないシステムで、近隣にも導入事例がなく、初めはすごく不安でした。ただ、fujimakの施設での講習や現場でのテストを通じて、不安は少しずつ和らいでいきました。緊張はしていますが、これからもサポートいただけるそうなので心強いです」と率直なお気持ちを明かしてくださいました。

fujimakカスタマーサポート部の調理アドバイザー(白衣着用)がニュークックチルシステム導入のお手伝いをしました。調理スタッフの皆さまとのミーティングの様子です
社会福祉法人伏木会の施設と提供サービス(カッコ内は入所定員)
病院給食における調理・食事提供のシステム別フロー

ニュークックチルシステムとは、芯温75℃以上で加熱調理した食品を急速冷却し、チルド保存(0~3℃)した後に、喫食時間に合わせて再加熱(芯温75℃以上)して提供する、クックチルシステムの一形態です。急速冷却後に、チルド状態で1人分ずつ盛り付けをし、再加熱カートでチルド保存をしておきます(図「病院給食における調理・食事提供のシステム別フロー」を参照ください)。

例えば前日までに調理と冷却を終えて、主菜や副菜、ごはん、味噌汁など、1人分ずつ、盛り付けを終えた食事のトレイを再加熱カートにセットしておけば、翌朝の提供時には、カートを再加熱し、配膳・喫食場所まで移動するだけで食事の提供が可能となります。当日に仕込みや調理をするのと比べて短時間で、かつ、少ない人数で食事を提供できるため、病院や老人保健施設などで導入が始まっています。

町の人々の“志”でできた法人

伏木会の設立は1997年。今回、厨房を改装した特別養護老人ホーム「ふしき苑」を中核施設として、高岡市の伏木地域で計3カ所の施設を運営しておられます。提供サービスも、特別養護老人ホーム以外に、短期入所、通所介護、訪問介護、ケアハウス、認知症対応型の通所介護、居宅介護支援事業所、市の委託事業である包括支援センターと多様です。「この法人は、伏木の町で高齢者が安心して生活できるようにと、地域の人々の"志"できた法人なのです」と話す山崎泰邦理事長が、法人設立の経緯を教えてくださいました。

今ではどの都市でも社会問題となっている、少子高齢化に伴う、生産年齢人口(15~64歳)の減少。伏木地域では1990年代後半からその傾向が顕在化し始めたのだそうです。

山崎泰邦理事長。日ごろから、職員の方々に対して、「地域の施設なのだから、私たちの仕事ぶりは常に町の人たちに見られているよ」と話しているそうです

「普段、『うちの子は、東京で活躍しているから』と親御さんが周囲に自慢をしている家でも、雪が降ると、除雪を担える人がいません。このままだと、将来、高齢者が住める町でなくなってしまうと危機感を抱いた当時の婦人会会長が、『町を守らないと。まず、健康なうちから集合で生活できるケアハウスを作りましょう』と問題提起をしました。これに多くの人が賛同して、町全体が動いたのです」(山崎理事長)

市の教育委員会に勤務し、社会福祉関連の業務にも就いていた山崎理事長のお父様が、役所を勇退して理事長職を引き受けて社会福祉法人を設立。高齢者の生活に求められる機能を備えた施設を整えていきました。法人の理事には、現在も連合自治会や社会福祉協議会、児童福祉関連の会長など、地域の世話役と言われる方々が名を連ねています。

「少ない人数で同じ生産ができるのなら、設備投資をする価値がある」

ただ、伏木会も施設の運営を担う人材の確保に苦労しておられます。「5年ほど前から、調理スタッフの求人を出しても、人が集まらなくなりました。厨房は敬遠されがちな職場ですし、当法人の施設は、朝6時からの早番や、夜8時退社の遅番があります。勤務中は、限られた人数で150人前後の食事を作る作業が3、4時間サイクルで続きます。すると、時間に追われて精神的なゆとりも生まれづらくなってしまいます」(山崎理事長)。

そこで、提供する食事を前日までに調理・保存し、当日は再加熱するだけで提供できるニュークックチルシステムの導入に踏み切ったのだそうです。「ラインに生産性の高い機械を入れることで、少ない人員で同じ量を生産できるようになるのなら、設備投資をする価値があります。民間企業での勤務時に、そのような判断を何度も経験してきました。今回は、ギリギリの人数で回していたので13人という調理スタッフの人数は減りませんが、現場の負担を減らし、家庭と仕事を両立できる環境を整えるよう、投資をすべきだと考えました」(山崎理事長)。

コンビオーブンやバリオデュアルパンも導入いただきました。「うまく使いこなして、調理の効率化も進めたいです」(能澤様)

貴重な朝の時間。出勤を1時間遅らせることができる

能澤由香様。認定在宅訪問管理栄養士の資格もお持ちです

ニュークックチルシステムの導入で、実際に労務環境はどのように改善されるのでしょうか。まず、朝6時出勤の早番は7時出勤になります。能澤様は、「特に朝1時間の違いは本当に大きいです」とお話しになります。「雪が降るとクルマを出し入れするための雪かきが必要で、通勤に普段よりも時間がかかります。6時出勤の場合、5時半に家を出ても間に合いません。早番が7時になれば、気持ちの面でもゆとりが生まれますし、子育て中のお母さんでも仕事に就きやくなると思います」(能澤様)。

もう一つ。これまで7人で運営していた日曜の調理と提供は、3~4人に減る予定だそうです。「スタッフの家庭のことを考えると、せめて日曜日は多くの人に休んでほしいと思っていました。地域の最小単位はそれぞれの家庭ですから」(山崎理事長)。配膳業務のないスタッフの勤務時間は朝8時半から17時半までにするのが目標だそうです。

ごはんと味噌汁は当日の調理です。「ただ、今回の厨房改装で自動洗米機と、予約炊飯が可能なfujimakの炊飯器を導入し、炊飯器のスイッチを入れるために朝早く出勤する必要がなくなりました。これだけでも負担はかなり減ります」(能澤様)

fujimakに発注。決め手は「熱意が違った」

伏木会は、ニュークックチルの導入に際して、複数の厨房機器メーカーからプレゼンテーションを受けたそうです。「fujimakは他社と熱意が違いました。資料にはボリュームがあり、内容も分かりやすかったです。そして、業者選定で重視していた、現場のスタッフへのサポート体制も充実していることが分かりました。将来、ニュークックチルシステムを3カ所の施設全てに広げたいと考えていますが、fujimakは最後まで面倒を見てくれるという安心感があります」(山崎理事長)。

地域介護の中核施設としての使命を果たし続けるために、時代の変化に応じたシステム整備を進めている社会福祉法人伏木会ですが、食事提供については、法人設立以降、変えていないことがあるそうです。完全調理品などを極力使わないこと。そして、できるだけ地元の業者から仕入れるということです。

「地域に助けられながら運営してきた施設ですから、可能な限り町にお返しをする。これは先代からの方針です」(山崎理事長)。地域との共存共栄は、ときに入所者の方々に特別な楽しい時間を提供してくれます。「伏木には春に大きな祭りがあります。6つの町内の祭囃子が、事前練習を兼ねてこの施設で発表会をし、外出できない入所者の皆さんを喜ばせてくれるんですよ」。こうお話しになる山崎理事長の表情がひときわ柔和になりました。

山崎泰邦理事長(右)と能澤由香様(左)

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施設情報

施設名 社会福祉法人伏木会 特別養護老人ホーム「ふしき苑」
所在地 富山県高岡市伏木国分1-10-10
開所 2003年4月
Webサイト http://www2.tcnet.ne.jp/fusikien/