お客様事例北陸すしアカデミー

寿司県・富山ならではの「寿司と魚のプロ」養成学校
理想の学び舎誕生の舞台裏

広島校長の掛け声で、生徒が一斉に寿司を握り始めます。緊張感とともに、みなさんが楽しんで取り組んでいる雰囲気が伝わってきます。こちらの生徒は2期生で、富山県内だけでなく、石川県や愛知県の出身者もいます。カリキュラムは2カ月で1クールです

「寿司で活躍する人を育てたい、応援したい」と、寿司県・富山の港町で2026年に開校した北陸すしアカデミー。校舎は、趣のある古民家です。学校仕様に改装するにあたっては、最大限、元の形を生かすように進められました。大きな魚をさばける実習台など、設備には特注品も多く、理想のカリキュラムが実現できる場となっています。ブラストチラーを活用することで、教育の幅も広がったといいます。魚と寿司を学ぶにはこれ以上ない環境となりました。

北前船の歴史が息づく港町に、
寿司職人養成の拠点を開校

昔の面影が残る街並み。江戸時代から北前船の寄港地として栄えた港町で、廻船問屋の建物や酒蔵などが並びます。近年人気が上昇しているスポットで、観光客も多く訪れます

「さあ、これから3分。全力で握ろう」

北陸すしアカデミーの実習室に、広島順三校長の声が響きます。合図とともに、生徒たちは一斉に寿司を握り始めました。真剣な表情で課題に向き合う姿からは、本物の技術を身につけようとする意欲が伝わってきます。

北陸すしアカデミーは2026年3月に開校した、寿司職人養成学校です。位置する富山市・岩瀬地区は、かつて北前船の寄港地として栄えた港町エリア。当時を彷彿させる風情のある家屋が並んでおり、北陸すしアカデミーの“校舎”も、歴史を感じさせる古民家です。

「長年培われてきた文化を感じられる場で、伝統の食である寿司のプロを養成する学校をつくりたいと思いました」と広島校長は熱く話されます。

北陸すしアカデミーの校舎は、歴史を感じさせる古民家。元は釣具店だったため、現在も入口の一角は釣り餌などの販売スペースとなっています
「寿司は、魚に高い付加価値をつけられる商品です」と語る広島校長

広島校長は、小売店や飲食店など魚を扱う幅広い事業を展開するジェイズコーポレーションの代表取締役でもあります。この会社の事業の新たな柱として、北陸すしアカデミーを開校されました。学校設立には、魚と後進たちへの深い思いがありました。

広島校長は子どもの頃から魚が好きで、19歳で鮮魚店に就職しました。魚の扱いを身につけるうちに、次のように考えたそうです。

「魚の商品はいろいろありますが、一番売れているのは寿司でした。大根のツマを添えて売る刺身の価格はそれほどでもないのに、シャリに乗せる寿司は高く売れる。そこで、寿司を握れるようになりたいと思ったのです」

22~24歳の間、富山市の寿司の名店で修業され、独立。その後、次々と店舗を開店し、事業を拡大されます。現在の店舗数は18店。関連会社も5社にのぼります。事業展開を進めるうち、蓄積してきた魚に関するノウハウを伝える場となる学校をつくりたいと考えるようになりました。

転機となったのは、東京すしアカデミーの校長との出会いでした。富山県は「寿司といえば富山」というPRを大々的に行っており、その一環のイベントが富山駅で開かれていました。たまたま出張帰りにそこを通りがかった広島校長は、出演者だった東京すしアカデミーの校長に引き合わせてもらい、「富山で寿司学校」の構想を相談したのです。そこから、学校設立に向けて東京すしアカデミーで教育ノウハウを学びはじめました。現在も提携関係を築いています。

大きな魚もさばけて、
和食も学べる設備に

広島校長は、「いつか店を開きたい」と考え、岩瀬地区に古民家を2軒、購入していました。学校を開設するに当たり、「その1軒を使おう。港町の風情ある建物は、学校の意義にも合致する」と考えたそうです。古民家の造りを最大限生かし、壁や梁、欄間(らんま)は元のまま活用しています。

要となる厨房設備に関しては、ジェイズコーポレーションで長年強い信頼関係のあったfujimakの担当者に相談されました。

「学校は店舗と異なり、多人数が同時に実習できる環境が必要です。fujimakは料理学校の厨房設計にも実績があると聞き、安心して相談できました」(広島校長)

その際、広島校長には、実習の場に盛り込みたいことがありました。「寿司を握るだけでなく、地元で揚がるブリなどの大きな魚もさばけるようになってほしい。そして、寿司だけでなく和食も学べるよう、必要な設備がほしい」。この2点がリクエストでした。

そこで、大きな魚をさばける特製の舟型シンクをfujimakで手配しました。広島校長は、「大型魚の下処理を実践的に学べる環境は、当校の大きな特長です。さまざまな魚を扱える技術は、寿司職人にとって大きな強みになると考えています」と熱い思いを語ってくださいました。

fujimakが要望に合わせて特注製作した大型魚対応の実習台

和食の授業のために、実習台にガスコンロも設置しました。必要な時に、下の棚から取り出して使えるようにしています。火を使う実習は少ないため、カセットコンロで間に合わせる手もありますが、ガスコンロの導入は絶対条件でした。「カセットコンロは火力が弱い。和食を教えるからには、飲食店で使うガスコンロで学んでほしい」。これが広島校長の考えでした。

「本格的な和食まで幅広く提供できることは、寿司職人にとって大きな付加価値になります」(広島校長)。

和食の特別講師として、ミシュラン三つ星を獲得した東京の名店「日本料理 山崎」の店主、山崎浩治氏を招いています。実際に店舗で和食を提供する状況を見据えて、スチームコンベクションオーブン(コンビオーブン)も導入しました。

こうして、最初の打ち合わせ時から約1年半をかけて、fujimakが全面的に支援した学校が開校しました。

実習台の下の棚には、ガスコンロが収納されています。必要に応じてこれを台の上に引き出して使います。厨房は講義の場にもなるので椅子も収納できるようにしています
お寿司の学校にスチコン(コンビオーブン)を導入。「和食の基本的な作り方を学んだうえで、機器を活用する現場対応も知ってもらいたい」と広島校長

ブラストチラーの活用で
実習の可能性がさらに広がる

フル活用されているブラストチラー。これがあれば、心置きなく多くの魚をさばけるといいます

すぐ近くに海があり、釣りに来る人が多いという場所ならではの、想定外の展開もありました。

「釣れ過ぎてしまう釣り客がいます。そんな方を対象に、買い取りサービスを始めました。生徒が魚をさばく練習に使います」と、広島校長。実習室の一角には、生け簀も設置されています。さばいた魚は、真空包装して急速冷凍すると長期保存でき、実習用食材を計画的に確保可能です。シャリも同様に冷凍保存し、解凍したシャリを巻物の練習に使っています。

実習室の一角には、実習で使う魚のための生け簀も設置されています
取っ手のない冷凍冷蔵庫は動線を邪魔することなく、掃除がしやすく衛生的と高く評価されています

卒業後も見据えた
支援体制づくりを目指す

開校してまだ日は浅いものの、広島校長の頭の中には先々の展開が詰まっています。卒業して終わりではなく、その後のサポートもその一つです。

「具体的には、食材や器具類、機器などの調達サポート。そして、経営の相談です。独立して寿司店を開くときに、力になりたい。そうした支援の仕組みを作りたいと考えています」(広島校長)。北陸すしアカデミーのWebサイトには、「あなたの寿司職人としての人生をサポートします」との言葉が掲げられています。まさにそれを体現するものです。

取材中、広島校長は「生徒にはいろいろな経験をしてもらいたい」と、何度も口にされました。「漁港が近いので、漁船に乗る機会もつくりたいですね。お客様との話のネタにもなりますから。寿司を握るだけでなく、お客様の目の前に立って、会話しながら技を見せるのが寿司職人です。お客様に喜んでいただくには、『あなたのために』という心持ちをどれだけ伝えられるかが勝負。そのためにいろいろな引き出しを用意しています」(広島校長)

建物の奥にある蔵を改装した、趣のある店舗型実習場。卒業を迎える生徒が家族や友人を招き、自ら握った寿司でもてなす晴れの舞台として、校長の思いを込めて整備された特別な空間です

2軒購入した古民家のもう1軒を、「卒業生のインターン店舗」にしたいとの構想もあります。「寿司を握る技術」だけでなく、お客様の前に立ってパフォーマンスするという寿司職人としての総合力を身に付ける場をつくりたいと話されます。「価格は安価にして、地域の方に気軽にいらしていただけるような店です。お客様に育てていただく場、という位置づけですね」。広島校長のアイデアは、次々と生み出されていきます。

「外国人の生徒にも来ていただきたい」とおっしゃる広島校長。開校から間もない北陸すしアカデミーの構想は、すでに教育の枠を超えています。寿司技術の習得にとどまらず、魚食文化や地域の魅力を次世代へ継承する拠点として、その挑戦はこれからも続きます。

「生徒には、一つひとつの経験が後々の財産になります。寿司の技術はもちろん、それだけでない経験を積める機会をつくり、財産を少しでも増やしてほしい」とおっしゃる広島校長。その言葉は、魚に関わる後進たちを応援したいという思いにあふれています

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施設名 北陸すしアカデミー
経営 北陸すしアカデミー株式会社(有限会社ジェイズコーポレーションのグループ会社)
所在地 富山県富山市東岩瀬町322-1
開校 2026年3月
Webサイト https://hokuriku-sushiacademy.jp/