お客様事例星の森保育園

豊かな感性をはぐくむ
"食育仕様"のオープンキッチン

当番の園児が給食室のカウンターでお昼ごはんを受け取り、先生と一緒に、皆で食事をするホールまで運びます。調理スタッフが優しいまなざしでその様子を見つめます

お昼の給食やお弁当は、保育園や幼稚園に通う子どもたちにとって、楽しみなイベントの一つ。「五感で感じる保育」を掲げ、食育に力を入れる福島県田村市の「星の森保育園」は、園児が食に興味を持ち、食の楽しさを感じることができるよう、調理室をオープンキッチンにしました。カウンター周辺を料理教室の場としても利用できる、"食育仕様"の楽しい多目的キッチンです。

「小さなコックさん」が作るキャロットケーキ

お昼前の保育園の調理室。ホールに面したガラス扉を開け放って出現したカウンターの前で、色とりどりのバンダナを三角巾代わりに結んだエプロン姿の小さなコックさんたちが、キャロットケーキ作りに挑戦しています。「給食先生」と呼ばれる管理栄養士や調理職員の手を借りながら、オレンジ色の生地を丸い型に流していきます。「たこ焼きパーティーみたいで楽しいね」「あ、ふっくらとしてきた」「なんだかいい匂いがしてきたよ」──。

小さなコックさんが「美味しそうにできたよ」と言えば、給食先生が「おやつの時間に食べようか。その前にお昼ごはんいっぱい食べてね」と返します。福島県田村市「星の森保育園」で、オープンキッチンの調理室を使って行われた、園児向け料理教室の一コマです。

料理教室の様子。調理室の床面は子どもが立つフロアより40cm低くしており、中に立つ大人が園児と同じ目線で会話できるようになっています
明るい調理室。加熱機器などの使用中はガラス戸を閉めて運用します。アンダーカウンタータイプのテーブル型冷蔵庫をホール側に並べ、カウンターとしても使用します

園児と同じ目線になるよう、厨房の床面を低く設計

星の森保育園は、福島県内で総合病院や保健看護学校、老人保健施設、保育園・保育所などを経営・運営する公益財団法人星総合病院が経営する、民営の保育園です。同財団が、それまで田村市からの委託で運営していた保育所を民営施設として引き継ぐ格好で、2022年4月、新しい場所、新しい園舎で、開園しました。0歳児から5歳児までの150人がこの園で楽しい時間を過ごします。

教育方針は、「五感で感じる保育」。同財団が経営・運営する他の4施設も、食育をとりわけ重視しており、この度開業した星の森保育園では、延べ床面積1241.95平方メートルある園舎の中央、ホールに面した一等地に調理室をレイアウトしました。ホールと調理室を仕切るスライド扉は、温かみのある木枠に耐熱強化ガラスを入れたオープンキッチン仕様。冒頭でご紹介した料理教室や給食の受け渡しなどの際、調理室に立つ大人と園児が同じ目線の高さで会話できるように、調理室の床面は園児たちが活動するホールや廊下よりも40センチ低い高さになっています。

さらに、調理室の天井付近には、床にのぞき窓を設けたキャットウォーク(天井通路)も設置しています。園児たちは、教室から、ホールから、そして調理室の真上からも「お昼やおやつができる様子」を見ながら遊びます。

キャットウォーク。調理室の上部にあたる床面には、ところどころ小窓が設けられています
キャットウォークの小窓から見る、調理室。「お料理をするところ」でお絵かきをすれば、クレヨンでこの構図を描く園児がいるかもしれません

作る姿が見え、匂いが届く"台所"

「食は楽しむものです。子どもたちには、さまざまな体験を通じて、食の楽しさを感じてほしい。オープンキッチンの調理室は、その実践に欠かせない舞台装置です」。法人こども事業部の佐藤正敏部長はこうおっしゃいます。「給食を作っている風景を目にしていると、一緒に美味しそうな匂いが教室やホールに届きます。その匂いから献立を想像し、『早く食べたいな』と待ち遠しく感じる。その過程自体が食にまつわる体験であり、楽しさや美味しさにつながっていくはずです」(佐藤部長)。

「食は楽しむもの」と日ごろ語っておられる、星の森保育園の母体である財団法人の星北斗理事長のお考えを形にすべく、佐藤部長や他の職員の方々と一緒に調理室の構想を練った法人事業本部企画部食Fullクリエイト課の戸松明子課長は、この調理室に強い思い入れがあるとおっしゃいます。「家庭で、親御さんが台所に立っているのと同じ環境を作りたかったのです。作る人の姿が見えることで、子どもたちは食べることをおろそかにしなくなり、自身の健康にもつながってきます。この施設が、自然な形で食についてさまざまなことを感じる入り口のような存在になればいいと思っています」(戸松課長)。

「見える~?」。キャットウォークから手を振るお友達にエアでハイタッチ
調理室で給食の調理が進む様子を教室から眺めることができます

啓発活動で実感した「食育は幼少期から」

キッチンカー「キッチンほしくま」。地域のイベントなどに出向いてその地域の食材を使ったメニューを提供したり、地域のお子さんへの出張教室を開催したりしています

実は財団法人星総合病院では、星の森保育園の開業以前から、園児や地域の方々に向けて、食の豊かさを伝える活動を続けてこられました。財団で保有する「ほしくまファーム」(「ほしくま」は財団法人星総合病院のキャラクター名)における野菜の栽培・収穫体験や、キッチンカー「キッチンほしくま」を活用した、旬の食材を使ったメニューの提供や食に関する啓発活動などがその例です。

こうした活動に加えて、管理栄養士として病院での栄養指導などに従事してきた戸松課長は、地域の人々の健康づくりを進めるためにも、保育園における食育の充実が欠かせないと感じてきたそうです。「大人になってから、あるいは高齢になってから患者さんに栄養指導をしても、残念ながら行動変容につながらない場合が多いのが実情です。食習慣は幼少期に形成されますので、この時期の意識づけが非常に大切です。病院を経営する私たちが保育園を運営する意味の一つも、この点にあるのだと考えています」(戸松課長)。

労を惜しまず、遊びを通じた体験の機会を作る

法人こども事業部の佐藤正敏部長(写真右)と、管理栄養士で法人事業本部企画部食Fullクリエイト課の戸松明子課長(写真左)

調理室を活用した新たな食育プログラムの計画はあるのでしょうか。佐藤部長は「具体的にはこれからです」と前置きし、冒頭の料理教室を例に、こう語ってくださいました。

「子どもたちは遊びを通じて豊かな感性を獲得していきます。食育に限った話ではありませんが、教えるのではなく、遊びという体験を通じて何かを感じる機会を作りたいのです。料理教室でホットプレートと材料が目の前にあれば、子どもたちは遊びとして『自分でやりたい』と思いますよ。手を動かして、料理の面白さを感じます。そこから興味が広がって、野菜について調べたり、家庭で料理を手伝ったりします。その中から調理師になりたいという子が出てくれば素晴らしいと思いませんか。ホットプレートを使えば火傷の心配がありますが、『だから、やらない』で片づけるのではなくて、面倒かもしれないけれど、工夫して安全な運用の方法を考え、実現にこぎつける。『子どもたちに体験をさせたい。ではどうすればよいか』という姿勢で私たちがどれだけ動けるかがカギでしょう」(佐藤部長)

「本物を体験してほしい。だからfujimakにしました」

今回、星の森保育園の厨房設計と施工はfujimakが担当させていただきました。「fujimakさんとは長いお付き合いです。何を伝えても当財団の理念を理解したアイデアを出してくれますので、担当のサービススタッフには、信頼しかないです。今回も、私たちが語る思いを厨房として形にしてくださいました」と戸松課長。

佐藤部長は「私たちは、子どもたちに疑似体験ではなくて、本物を体験してほしいのです。給食も、まずは美味しいことが絶対条件です。100人分も200人分も一度に美味しいものを作るには、十分な火力があって信頼性の高い、本物の機器を使う必要があります。だからfujimakにお手伝いしてもらいました。この調理室は保護者の方々からも好評で、『私たちもここで作った給食を食べたい』という声が上がり、試食会を実施したほどです」と明かしてくださいました。

冷蔵庫、コンビオーブンなど、厨房機器はすべてfujimak製品をお使いいただいています
3歳児、4歳児、5歳児はホールで一緒に給食を食べます

佐藤部長は、ホールで給食を食べる園児たちに目を細めながら、「地域の野菜を給食用に分けていただいて、『今日は〇〇ちゃんのおじいちゃんが作ったトマトですよ』と言えば、その園児も鼻が高いでしょう。子どもたちもそのトマトに興味を持つはずです。食を通じて地域ともつながりを深めて、『おらが(町の)保育園』としてかわいがっていただきたいですね」とお話しくださいました。"食育仕様"の園舎は、園児、家庭、そして地域を食で結ぶ循環の拠点として、田村市になくてはならない存在になりそうです。

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施設名 星の森保育園
経営 公益財団法人星総合病院
所在地 福島県田村市船引町船引字屋頭清水285番地
電話 0247-61-5581
開設 2022年4月
Webサイト http://www.hoshipital.jp/kodomo/hoshinomori.html