お客様事例mærge(マージ)
開業3カ月で星を獲得。最高峰に挑むレストラン

mærge(マージ)の厨房。壁に面した加熱エリアのコーナー部分に薪窯を配置しています
「ミシュランガイド東京」で星を6年連続で獲得してきた気鋭のシェフが、最高評価である三つ星の獲得に挑むべく、東京・南青山にレストランを開業しました。シェフが「今、日本で自分が料理をしている意味」を自問しながら食材に向き合い、生み出した料理が、日本でも指折りの職人やアーチストが参画して作り上げた上質な空間でゲストを魅了します。「ミシュランガイド東京2026」においてオープン後わずか3カ月で一つ星を獲得したことからも、このレストランの開業を待ち望んでいた多くの美食家に対して、期待に応える料理とサービスが提供されていることがうかがえます。
「最高出力を出す」ために、
移転開業を決意

- ダイニングスペースで語る柴田シェフ。椅子は家具職人の集団「KOMA」代表で、「現代の名工」である松岡茂樹氏の手によるものです。制作に至る過程がこちらで詳しく紹介されています
「ミシュランガイド東京」の星を2019年から6年連続で獲得した、東京・白金のフランス料理店「ラ・クレリエール」。その店舗のオーナーシェフであった柴田秀之シェフが2025年6月、東京・南青山にレストラン「mærge(マージ)」を開業しました。その柴田シェフのもとに2025年9月、うれしい知らせが届きました。「オープン3か月にして、9月25日に『ミシュラン東京2026』、1つ星を獲得することができました。ご協力いただいた皆さまで勝ち取ったものです。本当にありがとうございます。まだまだ頑張ります」(柴田シェフ)。
柴田シェフは東京・恵比寿の「レストランモナリザ」で料理人としてのキャリアをスタート。2006年に渡仏して星付きレストランで腕を磨いて帰国後、「モナリザ丸の内」「モナリザ 恵比寿本店」で料理長を務め、2016年には東京・白金にオーナーシェフとして「ラ・クレリエール」を開業なさいました。そのラ・クレリエールは、2019年に「ミシュランガイド東京」で一つ星を獲得して以降、2024年まで6年連続で星を獲得しています。この間、柴田シェフは、フランス発祥のレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ2021」で、「確かな基本技術で店舗に貢献し、その才能に将来のグランシェフへの可能性を認められた料理人に贈られる賞」である「明日のグランシェフ賞」を受賞しています。
キャリアを重ねる中で周囲から高い評価を獲得してきた柴田シェフには、長年の目標があるそうです。「三つ星を獲りたい。この目標は、20歳で料理人になってからずっと変わっていません。山は近づいた方がその高さが分かるように、ラ・クレリエールでお客様にご評価をいただき、一つ星も連続して頂戴する中で、三つ星と現状との間には歴然とした差があることが分かりました。目標を達成するための課題の数々が明確になったとも言えます」。こう語る柴田シェフは今回、その差を埋めるべく、「あらゆるもののクオリティを上げて自分の最高出力を出し、レストランの再定義をする場」(柴田シェフ)をつくることを選択したそうです。それがマージの出店です。「周囲から『ラ・クレリエールをやめる必要はないのではないか』とも言われましたが、自分の世界観を表現し、自分たちの料理とサービスが正しく評価される新たなステージが必要と考えたのです」(柴田シェフ)。
「まだ名もない素材にも
額縁をかける」
マージという店名は、余白や額縁を表す「marge」と、融合を意味する「merge」に由来しています。柴田シェフが自ら産地を歩き、その品質を確かめ、生産者との信頼関係を構築する中で仕入れた “嘘のない食材”を、全11品のコースで提供しています。
「フランス料理の枠にとらわれるのではなく、今、自分が日本で料理をしている意味を考えながら食材に向き合っています。コースには、鱚や鮠(ハヤ)を使った料理も採り入れています。分野で言うと、日本が5、フランスが4、その他が1という割合です。まだ名のない素材にも額縁をかけるように光をあて、食材と食べ手の新しい関係をつなぐことにも挑戦します」と柴田シェフ。
名もない素材とは、新たな品種などを指すのではないそうです。「人によって大事なもの、価値があるものは違います。分かりやすい例えをすると、農家の方は規格に合う大きさと形のキュウリが商品として大事ですが、僕らが畑に行くと、花が咲いている小さなキュウリが目に留まります。一般に商品として認識されていない食材ですが、これが素材の一つとして皿に乗っていると、料理の価値が高まります。また、本来、食材をそのままの形でもっとも良く表現しようとすれば、鮮度が高い産地で提供するのがベストですが、実際には消費地に届くまでに時間が経過し、状態が変わります。この時間差に、僕らの技術が入る余地があります。そこに自分の技術をいかに入れて、料理としての価値を高められるかを追求しています」(柴田シェフ)。
6席の個室や、キッチンを見渡せる4席のシェフズテーブルを備えた30席の店舗は、日本を代表する左官職人が手掛けた塗り壁、神代欅(じんだいけやき)を用いた家具、「現代の名工」に選ばれた家具職人による椅子など、現代的な中にも、自然の息遣いや伝統、職人やクリエイターの技が随所に感じられる、上質な空間です。そこで働く調理スタッフも、柴田シェフがクリエイターと呼ぶにふさわしいと考える方々を新たに採用したそうです。「180人を超える応募の中から採用した25人は、半分以上が20代。各パートのトップは業界で名が知れている人が務めています。“ドリームチーム”を作ることができました」(柴田シェフ)。

- シェフズテーブル。料理人たちの調理風景を眺める額縁が目の前に広がっているような感覚を味わえます
機能的で品格のある厨房
柴田シェフがドリームチームを率いて最高出力を出す厨房は、fujimakが設計と施工をお手伝いしました。清潔感のある白と引き締まった黒、そしてベース色のグレーがバランス良く配色されており、機能性と安全性、スタイリッシュな美しさを兼ね備えた、品格のあるキッチンです。
厨房を構成する機器や設備は、薪窯やストーブなど伝統的な機器がある一方で、高い精度や付加価値の高い機能が求められる部分では、最先端の機器が採用されています。加熱機器ではコンビオーブンがその例で、空調は、排気音が静かで、フードがないために高い採光性を確保できるハルトンの換気天井システムが組み込まれています。衛生管理に関わる設備として、クラウド型の温度管理システム「キッチンリンク・クラウド」を導入しておられます。


- コールドテーブルの天板センター部にはシンクにつながる溝を埋め込んでいます。右奥がシェフズテーブルのカウンターです(写真左)(写真上)。排気天井システムやコンビオーブンも採用いただきました(写真右)(写真下)
白い天板が目をひくコールドテーブルは、機能性と美しさを両立させた特注品です。天板の素材は耐摩耗性や耐衝撃性などに優れた超圧縮素材「DEKTON」で、その下には引き出し前面をビンテージカラーで仕上げた薄型ドロワーを組み込み、調理に必要な器具や小物類を収納できるつくりになっています。さらに、その下に配置されている冷凍冷蔵庫は、ステンレスにバイブレーション仕上げが施されています。


- コールドテーブル表面のステンレスは、品格のあるバイブレーション仕上げ。DEKTON天板との間に、ビンテージカラーのドロワーを設けています
fujimakをお選びいただいた
理由は、「この担当者がいること」
厨房づくりでfujimakをお選びいただいた理由を柴田シェフにお伺いすると、こんなコメントをいただきました。
「どのメーカーの製品を選んでも、冷蔵庫は冷えますし、コンベクションオーブンも稼働します。違いは何かと言えば、結局は人なんです。fujimakは、私が長年お付き合いをしてきた担当者がすばらしい。抽象的な言い方になりますが、サポートが手厚く、距離が近い。抱えている課題と自分が考えた解決策を要望として伝えると、その課題を理解して自分事として考えて、『それだとうまくいきませんから、こうしませんか』と提案をしてくれます。プロとしてのスキルと経験と人間味を備えた、このベテラン担当者がfujimakにいることが、私にとってはfujimakを選択する理由のすべてです」(柴田シェフ)。マージでは、ご自身のこだわりを担当者にお話しいただき、fujimakがプランをご提案して、修正を加えながら厨房をつくりあげていきました。
「私は料理のプロであって、厨房のプロではありませんから、こだわっている内容を伝えたら、それ以上のことは、信用できるその道のプロに任せた方がよいと思っています。そう言えるほどの信頼を、fujimakの担当者に寄せています。同時に、こうも思うのです。その担当者のスキルや人間性を育てたのはfujimakという会社なわけだから、fujimakがすばらしいのだろうな、と」(柴田シェフ)

- 柴田秀之シェフ。エントランス前にて
関連製品・サービス

店舗名 | mærge(マージ) |
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経営 | 株式会社ユンヌフォイユ |
所在地 | 東京都港区南青山3-8-14 VORT 南青山III 1F |
営業時間 | 18:00-23:00、日曜、月曜定休 |
電話 | 03-6910-5615 |
開業 | 2025年6月 |
Webサイト | https://maerge.tokyo/ |