お客様事例entre nous(アントル ヌー)

「日本というテロワール」を表現する、"私たちの秘密の場所"

髙山英紀シェフ。ダイニングの壁面に据えられた木細工は、六甲山の山並みを表現しています

日本の料理界を牽引している髙山英紀シェフが、神戸・三宮にフレンチレストランを開業なさいました。「自分の世界観を表現した空間で、今までよりも一歩踏み込んだ料理を提供したい」とおっしゃる髙山シェフは、この店舗で「日本というテロワール」の表現に挑みます。内装や食器はもとより、厨房もご自身の経験の全てを注ぎ込んでプロデュース。限られたスペースで独創的な料理を効率的に調理するために、作業性の高い厨房づくりを追求なさったそうです。

「自分の世界観を表現しながら、料理としっかり向き合う」

「料理のオリンピック」 と称される「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」で日本代表として2015年と2019年に入賞し、同コンクールのアジアパシフィック大会では二度の優勝。15年間、兵庫県の芦屋でシェフを務めながら、ANAの機内食や介護食をプロデュース。さらに2022年には、自身の監修する台湾のレストラン「PARIS 1930 DE HIDEKI TAKAYAMA」がミシュランの一ツ星を獲得―。数々の輝かしい経歴をお持ちの髙山英紀シェフが2022年10月、「entre nous(アントル ヌー)」を開業なさいました。兵庫・芦屋の一軒家レストラン「メゾン・ド・タカ芦屋」から、神戸・三宮へと活躍の拠点を移し、オーナーシェフとして開業した店舗です。

店名は、ご自身が影響を受けた三ツ星シェフ、レジス・マルコン氏による命名。「entre nousの直訳は『私たちの間』ですが、『私たちの秘密の場所』という意味があります。20代から料理の世界に入り、さまざまな経験を重ねて40代半ばになりました。これまでの経験を生かして、自分の世界観を表現しながら、改めて料理としっかりと向き合いたいと考えています。親しい人を連れて行きたくなる、とっておきの空間を作ります」(髙山シェフ)。

ご自身がプロデュースする台湾のレストランがミシュランの星を獲得し、アジアを代表するシェフとしての知名度も高まっています

土地や風土を意味する「テロワール」。髙山シェフは、entre nousで「日本というテロワール」の表現に挑みます。使用する食材は、90%以上を日本の食材にしていくそうです。「フォアグラやトリュフ、子羊といったフランス料理の定番食材が使えなくなるわけです。あえて数字を掲げたのは、ある程度自分に制限をかけようと思ったから。日本には四季折々の素晴らしい食材があります。産地に足を運び、自分の目利きで産直に取り組めば、品質の高い食材を、より高い鮮度でお客様にお出しできます。生産者の力を借りながら日本の食文化を見つめ直し、今までよりもう一歩踏み込んだ料理を作っていきます」(髙山シェフ)。

6席の個室。木の質感を生かした落ち着いた空間になっています
「折り紙」 4種の貝と野菜を使った温かいシャルトリューズ 
ソースブールブラン

客席は、U字型カウンター16席のダイニングと、6席の個室。「日本というテロワールを表現するために、ビルの中にある店舗で、どのような空間をプロデュースすべきかを考えました。カウンター席はベージュ系、個室はシックなウォールナット系で統一し、信頼する作家さんたちの力を借りました」と髙山シェフ。ダイニングの漆喰の壁は、左官職人の江口征一さんが、淡路島の土を使って制作したものです。その対面には、六甲山の山並みを表現した木工作品が組み込まれています。木工アーチストである髙山シェフの弟さんの手によるものです。皿やカトラリーも日本の作家さんの作品だそうです。

U字型カウンター16席のダイニング

「移動しないで済むキッチン」を設計

こうして料理人としての情熱を語る髙山シェフは一方で、持続可能な店舗運営を可能とするための戦略を立て、entre nousを出店なさいました。

「ダイニングをU字のカウンターにしたのは、ウィズコロナに適応させるためです。これですと、カウンター越しに向き合うお客様の間隔を4m近く確保できます。賃貸物件で客席をゆったりと確保すると、厨房に当てられる面積はシビアにならざるを得ませんが、この店の厨房は、お客様への料理を作る場所であると同時に、通販やテイクアウト店で扱う商品の調理を担う、大切な拠点でもあります。週休二日制の、適正な労働環境も譲れません。省スペースでありながらも、品質の高い調理を限られた時間で実現できる厨房にするために、厨房における効率の高さに徹底してこだわりました」(髙山シェフ)

省スペースで作業性の高い厨房づくりには、コンクールへの出場経験が生きているのだそうです。「ボキューズ・ドールのコンクールでは、限られたスペースで、30人前の料理をゼロから作ります。通常は8時間かかる作業量ですが、与えられた時間は5時間半。いかにきれいな仕事をしているかという審査も入ります。こうした最高に厳しいルールのキッチンで働いた経験を生かしました」と髙山シェフはおっしゃいます。具体的には、作業動線をいかに短縮するかがカギとなるそうです。「一番無駄なのが、物を取りに行く時間です。食材の準備から調理までの工程をシミュレーションして、調理中はその場を離れずに済む、動いたとしても移動が半歩か1歩で済むレイアウトを考えました」(髙山シェフ)。

entre nousの厨房は、加熱調理、コールド調理、パティスリー、食器洗浄などのエリアに分かれ、それぞれ、移動距離が少なくて済むように機器が配置されています。例えば、壁面に加熱機器を並べた加熱調理エリアは、ガスレンジやオーブンで調理した後は、振り向けばそのまま盛り付け作業ができます。「これですと、1歩も歩かずに調理から盛り付けが完結できます。省スペースの厨房では収納スペースを稼ぐことがポイントとなりますが、単に場所を確保するのではなくて、手の届く範囲に必要な食材や器具が揃っていることが大切です。この加熱エリアでは、コールドテーブル上に引き出しをつけています」(髙山シェフ)。コンビオーブンの下にはブラストチラーを設置。加熱が終わった料理は、同じ立ち位置のままで、すぐに急速冷却をすることができるわけです。

加熱調理ゾーン。ガスレンジやオーブンで加熱後は、振り向けば盛り付けに移れます。必要な食材や器具などを取り出せるよう、カウンターに引き出しをつけたそうです
コンビオーブンの下にはブラストチラーを設置しています。「料理をオーブンから取り出してそのまま急速冷却に移れます」(髙山シェフ)

作業時間を短縮するには「手間を機械で稼ぐ」

entre nousでは、ブラストチラーのほか、コンビオーブン、バリオデュアルパンなど、先進の加熱機器や冷却機器を積極的に導入しておられます。ブラストチラーは主に通販で使用するメニューの急速冷却に、バリオデュアルパンはメニューの仕込みに、コンビオーブンは調理全般に活用しているそうです。「いずれも、私にとって、なくてはならない機器です。人手不足が本格化する中で、労働時間も適正な水準に保つ必要があります。『飲食業だから長時間労働は当たり前』という言い訳は許されません。時間のかかる調理は機械に任せるべきです。バリオもコンビオーブンも、温度管理ができますし、調理方法を登録すれば、レシピを高品質のままで継承できます。コンビオーブンの場合、手間のかかる洗浄まで自動でしてくれます」(髙山シェフ)。

バリオデュアルパンと、コンビオーブン

「fujimakだからこそ、ここまでの厨房ができた」

fujimakはentre nousの厨房設計・施工のお手伝いをさせていただきました。「これまでもfujimak製品を愛用してきましたが、今回改めて、総合厨房メーカーとしての実力を見せてもらいました」と髙山シェフはおっしゃいます。

「この店の厨房はfujimakだからこそできたと言い切れます。細かなレイアウトの指定や設備の特注を含め、『これを作ってください』とお願いしたものをすべて叶えてくれました。機器の性能の高さは言うまでもありません。予算が限られる中で、厨房の予算を圧縮しようと考える人がいるかもしれませんが、キッチンは店の売り上げや利益を生み出す大切な場所。"それなり"の設計や施工で、価格優先の機器を入れた厨房は、完成度が低く、使っていくとストレスが溜まります。経営をする以上、制約のない厨房づくりはあり得ませんが、与えられた条件の中で、fujimakは私たちの意思を理解した最善の厨房を作り上げてくれます」(髙山シェフ)

パティスリーエリア
床は防水性の高いFRP塗装をし、清掃時の排水を考慮してグレーチングまで傾斜をつけています

宣伝をせずに開店したにもかかわらず、店舗は予約の取りにくい状態が続き、リピーターも多くいらっしゃるそうです。料理人としての情熱と経営者としての使命とを両立させる空間で始まった「日本というテロワール」の表現。その奥行きがどんどん広がっていくのは間違いありません。

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店舗情報

店舗名 entre nous(アントル ヌー)
所在地 神戸市中央区中山手通1-25-6ラ・ドルレイ神戸三宮ビル2F
開店 2022年10月
営業時間・メニュー
第一章 「美食の追求」(17時半~18時半入店、21時まで)
※土・日・祝日のみランチ営業(ディナーと同メニュー)あり
1万5000円(税、サービス別途)
2万5000円(税、サービス別途)〜
第二章 紹介制「Bar à vin」(21時〜23時半)
※当面、木・金曜日のみ営業
Webサイト https://entrenous.jp/