お客様事例Maison KEI

Maison KEI

写真/後藤武浩

クリエイティブに
集中できる
機能的な厨房へ

左から「Restaurant KEI」スーシェフの稲澤様、「Maison KEI」シェフの佐藤様、「Restaurant KEI」オーナーシェフの小林様、「Restaurant KEI」シェフ・パティシエの高塚様

老舗和菓子店「とらや」と、パリの3ツ星レストラン「Restaurant KEI」がタッグを組んだフレンチレストランが、2021年1月にオープン。2020年にアジア人初の3つ星シェフとなった小林圭シェフが、富士山の麓・御殿場で供するのは、地元の豊かな食材を使い、心を砕いて仕上げる印象的な料理の数々。それらが作り出される厨房を、フジマックが設計・施工した。

料理人は掃除人であるべき

昨年、アジア人として初めて「ミシュランガイド フランス2020」の3つ星を獲得した、「Restaurant KEI」の小林圭シェフ。その小林シェフが、日本屈指の長い歴史を誇る和菓子店「とらや」とともにフレンチレストランをオープンした。意外性のある取り合わせのきっかけは、「とらや」の18代目・黒川光晴氏がかつてパリで働いていたときに遡る。当時「Restaurant KEI」の開業準備中だった小林シェフの姿に刺激を受け、以降も交流が続いていたことから、時を経て「Maison KEI」誕生へとつながったのだ。

開業準備のスタートは5年前という長期プロジェクト。が、小林シェフと「Maison KEI」をまかされた佐藤充宜シェフが、フジマックの担当者と対面で打ち合わせできたのは、年に1〜2回ほど。それでも電話や書面、メールで細かな要望もディスカッションしながら、完成へとこぎつけた。

小林シェフが厨房に対して最も求めることが「清掃のしやすさ」だ。「料理人は掃除人であるべき。ただし、掃除そのものではなく、最終的にきれいになっていることが重要なのです。だから、できるだけ時間をかけずに終えられるのが理想。1日1時間掃除の時間を短縮できたなら、年間でどれだけ料理の時間が捻出でき、クリエイティブな仕事に充てられるか。そのために、掃除のしやすさが大切になるのです」。

そのリクエストに応えるべく、床は汚れや水が機器の下に入ることを防ぐコンクリートベース仕様に。加熱調理部の天板は、つなぎ目のない一体成型を実現した。

コンクリートベース仕様
コンクリートベース仕様
「料理人は掃除人であるべき」と語るほど、掃除に重きを置く小林シェフ。それだけに、日々の清掃のしやすさを最優先に設計されている。調理台と床の設置方法は、ゴミや水が厨房機器の下に入らないコンクリートベース仕様に。
継ぎ目のない天板
継ぎ目のない天板
ステンレス鋼の天板は、海外のスタンダードである厚さ2mmのものを特注。しかも「清掃がしやすいように」という小林シェフの希望を叶えて、一体成型に。

パリと同じ
コンビオーブンを導入

コンビオーブン
コンビオーブン
パリの『Restaurant KEI』でも同様のコンビオーブンを使用、信頼を置く調理機器は温菜用と冷菜/製菓用の2台を導入。料理用にはブラストチラー、製菓用にはホイロを組み合わせている。「温度管理がしっかりしていて正確。自動洗浄機能も役立ちます」と小林シェフ。

掃除と同様に、重んじているのが「動線」。小林シェフ曰く「動線が悪いと、貴重な人材が1人、2人取られてしまうのと同じくらい仕事の効率が下がり、それはレストラン全体のクオリティに影響します。ですからこの建物は、まず厨房があって、そこから派生する設計にしてくださいと話しました」。

設計を担当した東京営業部 設計部係長・高橋勇貴は「厨房を最優先に店舗を設計するのは、日本ではかなり珍しいケース」と語る。

その甲斐あって柱がなく、一般的なレストランよりもかなり広く感じる。料理人の動線を考え抜いて必要な機器を配置した厨房は、スタッフが動きやすい空間が確保されている。

多くの調理機器の中で、小林シェフが特に信頼をおいているのが「コンビオーブン」だ。

「パリの店と同機種で、温度管理の確かさや空気の循環の良さ、自動洗浄の良さはパリで使い慣れているので安心ですね」と佐藤シェフ。「庫内の温度が安定していて、理想の焼き色がしっかりと付きます。焼く調理だけでなく、ヴァプール(蒸し調理)の時などにも役立っています」。

パリから応援に駆けつけていた「Restaurant KEI」シェフ・パティシエの高塚俊也さんも、次のように語ってくれた。

「焼きムラが少ないので、6段ある天板の入れ替えが不要で、それによる庫内の温度低下が防げます。自動洗浄システムも行き届いていて、故障の原因になりうるカルキまで取り除いてくれる。毎週1時間くらいかけてやっていた清掃作業がゼロになるばかりか、人間がやるよりも精度が高く、とても助かっています。おかげで、新しいレシピを考えたり試作に充てる時間が増えました。まだ使いこなせていない機能もあるので、さらなる可能性を感じます」

小林シェフの
思いを具現化

バリオデュアルパン
バリオデュアルパン
〈茹でる〉〈焼く〉〈炒める〉〈煮る〉〈揚げる〉、そして〈圧力調理〉の可能な多機能な1台「バリオデュアルパン」。実際に日々活用している佐藤シェフも「肉に焼き色を付けてから水を加えて煮込んで......というプロセスがワンストップで可能。2つのパンで別々の作業を並行してできるのもいいですね」と、その高い有用性を評価する。

また「バリオデュアルパン」は、小林シェフが来日時にフジマックのショールームでテスト使用し、導入が決定したもの。

「営業中に片方のパンで調理をしながら、もう片方でソースの仕込みをできる。幅広い使い方に対応できる機器だと思います」

今回、フジマックが「Maison KEI」の設計・施工を担当するに至った理由を小林シェフに尋ねると「交流のある周りのシェフにリサーチした結果です。車と一緒で、乗ったことはなくてその車への憧れだけで買うのか、それとも実際に乗っている人のリアルな感想を参考にするのか。厨房に関してはやはり実用性が大切ですから、フジマックの機器を使っているシェフたちの声を聞きました。料理人にとって1日の大半を過ごす場所ですから、働きやすい動線に基づいて必要な機器が揃っている、最大限働きやすい環境にしたい。そのための選択です」。


小林シェフ・佐藤シェフの思いを引き出し具現化してきた担当の高橋はこう語る。

「フランスの事情もよくご存知なだけに、日本の規格とは異なる細かなご要望がたくさんある中、ひとつひとつご納得いただける方法を探りました。これまで担当した中ではトップクラスに入る、大変にやりがいのある事案でした」

ただし小林シェフによると、「Maison KEI」はこれで完成ではなく、今後さらに店を拡張する構想などあくまでスタートしたばかりに過ぎない、とのこと。より働きやすく、シェフやパティシエたちが料理に集中できる厨房にするために、アップデートは続く。

製菓スペース前の窓
製菓スペース前の窓
パティシエの作業スペースの前には大きな窓が。「せっかく自然の中にある店なのだから、仕事をしながら季節の移り変わりを感じてほしい。特にパティシエは四季を見るべき。自然光の射し方や生命感のある木の姿などを見ることで、五感や色彩感覚が培われる」という小林シェフの思いが反映されている。
調理中の佐藤シェフ
調理中の佐藤シェフ
熱機器は、バリオクッキングセンター、コンビオーブン、IHコンロ、サラマンダー、鉄板、焼物器に加えて、通常フレンチレストランでは導入されることの少ないピザオーブンと中華レンジも。「300度以上の高温が出るピザオーブンは、やはりカリッとサクッと焼き上がっていいですね、中華レンジは炒め物にも使えますし"コースだけでは足りない"なんてお客様には"〆にチャーハンでも"なんてお出ししてみたいですね」と佐藤シェフ。

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小林圭シェフ プロフィール
長野県生まれ。長野と東京で料理人として研鑽を積んだ後、渡仏。南仏やアルザス地方などの有名レストランにて地方の豊かさを学び、そしてパリへ。世界的なシェフ、アラン・デュカス氏のレストラン「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」に7年間勤務。3年目からはスーシェフを務めた。2011年3月にオーナーシェフとしてパリに「Restaurant KEI」をオープン。2020年1月にフランス版ミシュランガイドにて3つ星を獲得。2021年にも続けて3つ星を獲得している。
小林圭シェフ
写真/後藤武浩

店舗情報

Maison KEI
写真/後藤武浩

富士の山裾、御殿場の森の中にあるレストラン。

店名 Maison KEI(メゾンケイ)
住所 静岡県御殿場市東山527-1
電話 0550-81-2231
営業時間 ランチ:11:30〜
ディナー:17:30〜
定休日 火曜、水曜
メニュー ランチコース(税込・サービス料別)4,500円(4皿)、8,500円(6皿)
ディナーコース(税込・サービス料別)5,500円(4皿)・9,000円(6皿)
座席数 40席
Web サイト https://www.maisonkei.jp/

※予約は電話でのみ受け付けています。
月初めに2ヶ月先までの予約ができます。