お客様事例流山市立おおぐろの森中学校

給食は学びの泉。「食育は流山に在り」

パススルー式の冷蔵庫・冷凍庫。扉の向こう側が給食調理室です

食を通じて、将来を担う若者たちに何を教え、伝えるべきか。そんな命題に教職員の皆さまが真摯に向き合い、食育を実践している公立中学校があります。千葉県流山市に開校した、おおぐろの森中学校の手作り給食には、毎日、何らかのテーマが込められています。食材の知識や食文化、地域社会との関わり...。食品衛生について最先端の環境を整えた調理施設から、生徒に"気づきの給食"が届きます。

生徒の「自律」を目指し、先生はコーチ役に

千葉県の流山市立おおぐろの森中学校は、2022年4月に開校した、「高台の緑に溶け込む 森の中の木の学び舎」をコンセプトとする中学校です。2022年9月現在の生徒数は338人ですが、学区内では人口増が続いており、将来は2000人規模まで生徒数の増加が見込まれています。国産の木材を使って建築されたぬくもりのある校舎は延床面積が1万4000㎡を超え、木造校舎としては国内最大とされています。

一方、ICTの活用にも積極的で、タブレットを生徒1人に1台ずつ配付し、電子黒板による授業が行われています。校歌の作詞は一青窈さんが手がけ、作曲は映画「千と千尋の神隠し」の主題歌で知られる木村弓さんが、編曲は作曲家でピアニストの中川俊郎さんが担当なさったそうです。

流山市の姉妹都市の木材を使用して建築されました
前川秀幸校長

脱炭素などSDGs推進の観点で木材をふんだんに採り入れた校舎、最先端のICTを活用した教育プログラム、感性豊かなアーチストが手がけた校歌--。ユニークな取り組みの多いおおぐろの森中学校には、校則はありません。夏休みの宿題もなし。「決まりがあって、それを守るのではなく、自ら考え、選択し、行動する人に育ってほしい。私たちは生徒の『自律』を目指しています」と前川秀幸校長はおっしゃいます。先生と生徒との関係性も、「教える人」と「教わる人」ではないそうです。「私たちは、職業上はティーチャーですが、本校で実践するのはコーチングです。教師は新たな発想で、学びを支援するコーチャーとして生徒に接しています」(前川校長)。

毎日、「学び」や「気づき」のある給食

栄養教諭の宮本有貴子先生

おおぐろの森中学校は、流山市内の公立中学校としては唯一の自校給食(市内他校は2校複合・親子方式)の採用校です。市内初の栄養教諭である宮本有貴子先生が現場の先頭に立ち、調理員さんや同僚の先生方などと一緒に、食育の一環としての給食を提供しておられます。

鰯の蒲焼き丼、ガパオライス、小松菜のペペロンチーノ、ビビンバ、きりたんぽ汁、シナモントースト、手作りピーチパイ--。日々の献立の多彩さに驚かされます。「献立は2カ月前から職員・教員に構想を伝え、意見をいただいて、前の月に確定します。地元の旬の食材を積極的に活用しながら、ひと手間をかけた手作りのメニューを提供しています」と宮本先生はおっしゃいます。

おおぐろの森中学校では、その日の献立にまつわる知識や情報を記載したA4判の「給食通信」を編集し、校内に掲示するとともに、厚生委員会の生徒が通信の内容を昼の校内放送で読み上げます。鰯の蒲焼丼を主菜とした日の場合、こんな書き出しです。「今日は千葉県産の鰯を使った『鰯の蒲焼き丼』です。千葉県の銚子漁港は、利根川の栄養豊富な水が流れ込み、太平洋を北上する黒潮と南下する親潮がぶつかる場所のため、鰯が大量に水揚げされます。梅雨の季節は、鰯の脂がのってくるので『入梅鰯』と呼ばれています。また、入梅鰯のおいしさから千葉県の夏の魚に選ばれるほどです...(後略)」。

給食通信。同じ内容がおおぐろの森中学校のHPでも公開されています

日々の給食が、食を通じて文化や社会を知り、興味や関心のアンテナを広げるきっかけとなるよう、工夫されています。「7月には、学校の隣の畑で枝豆の収穫体験をさせていただき、教室でさやむきをしました。その豆を調理員さんに託し、流山産コシヒカリの混ぜご飯にして、給食に加えました」(宮本先生)。米国人の先生が赴任した際は、その先生の故郷・ルイジアナの家庭料理であるジャンバラヤが給食の献立に登場しました。会話が弾み、距離が縮まったに違いありません。9月には、「ヴァレーニキ」というウクライナの郷土料理をアレンジしたゴーヤ料理を提供しました。「調理員さんたちと調べてレシピを作りました。食をきっかけとする平和教育の一環と考えらえると思います」(宮本先生)。

取材日の給食。人気ナンバーワンだというチキンカレーライスのほか、海藻サラダ、フルーツのヨーグルト和え、牛乳です。ご飯は流山産コシヒカリの新米

食品衛生に配慮した最先端の厨房

給食通信は、保護者の方も閲覧できるように、学校のホームページで公開しています。「その日のメニュー写真や、調理中の様子も撮影して公開しています。衛生的な厨房で丁寧に作っていることが分かり、保護者の方々からも好評です」と前川校長先生はおっしゃいます。

fujimakは、おおぐろの森中学校について、調理場の設計を担当させていただきました。コンビオーブンや冷蔵・冷凍庫、食器洗浄機などの機器もご使用いただいています。「給食に限った話ではありませんが、安全が第一です。本校の調理場は、一流ホテルの厨房に引けをとらないくらい、先進的な食品衛生のノウハウが反映されていると聞いています」(前川校長)。

チキンカレーの調理風景。ルーもオリジナルのレシピだそうです

将来の2000食対応も視野に入れて設計したおおぐろの森中学校の調理場は、食品衛生の面でも全国でトップクラスの設備です。汚染区域と非汚染区域を厳格に分け、交差汚染を防ぐレイアウトになっています。汚染区域から非汚染区域との間は天井まで伸びた窓や壁で空間を仕切り、食材や食器、料理は、パススルー式の冷蔵庫や冷凍庫、食器保管庫を通じて出し入れします。「下処理のエリアから調理室にパススルーで直接出せるのは、作業の流れとしてもやりやすいですね。食数が増えたときに、その効果をより実感できるのではないでしょうか」と宮本先生はおっしゃいます。

流山市立おおぐろの森中学校給食施設のレイアウト

「安心して手間をかけられます」

給食の調理は、朝7時から、7人の調理員さんが担当しておられます。汁物の出汁は鰹節で取るだけでなく、アップルパイや黄桃のパイ、ガーリックトースト、特製パウダーをまぶした揚げパンなど、手作りでバラエティ豊かなメニューを調理しています。

おおぐろの森中学校では、ケトルなどとともに、加熱調理にコンビオーブンをご利用いただいています。「焼き物だけでなく、蒸し料理にも使っています。安全性が大前提となりますので、食材の中心温度をコントロールできるのがよいですね。安心してひと手間をかけることができます」と宮本先生はおっしゃいます。

「昔は『出された給食は全部食べなさい』という指導が一般的でしたが、今は無理に食べさせるのではなく、生徒に『バランスよく食べなさい』と伝えています。『食べられるものを、食べられる量だけよそってもらうように。その量は自分で考えなさい』と指導します」と前川校長はおっしゃいます。

9月末には、生徒さんたちの希望を募った「リクエスト給食」を実施したそうです。「中学3年生が毎日完食してくれるので、そのごほうびとして企画しました。メニューは生徒たちに考えてもらいました」(宮本先生)。手間を惜しまず、メッセージを込めた給食は生徒さんたちにも好評なようです。

「周囲からは『新設校は大変でしょう?』と言われますが、新たな発想で学校を改革していける醍醐味があります。教職員の個々の発想が混じって、新たな視点で新たな教育活動ができる。宮本先生に託している食育もその一つです」と前川校長はおっしゃいます。食を通じた教育の可能性を広げる、教職員の皆さんのチームプレーはこれからも続きます。

木造のホールにて。前川秀幸校長(写真左)と宮本有貴子先生(写真右)

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施設名 流山市立おおぐろの森中学校
所在地 千葉県流山市大畔581番地
開校 2022年4月
Webサイト https://schit.net/nagareyama/oogurotyuu/