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「生き残る」ための飲食店経営術 第3回

アフターコロナのパスポート、「未来日記」

講師は石田義昭(いしだ・よしあき)氏。フードサービスコンサルタント歴30年以上で、飲食店コンサルティング企業の株式会社FBA代表取締役。顧客心理に訴える具体的な戦術指導に定評があり、小規模店から大型店まで、直接指導店舗数は1,500店を超えます。アフターコロナを見据えた、ウィズコロナ時代に飲食店が生き残るために必要な心構えと具体的な施策について、3回にわたってポイントを解説していただきます。

第3回は、アフターコロナへの備えについて。現状の苦境への対応で頭の中がいっぱいだという飲食店経営者に対して、石田氏は、「それでも、生き残った後、お客様に選ばれる店になるための姿を考えて、準備を始めることが欠かせない」と説きます。

更新日:2020年11月02日

前回まで、コロナ禍における対症療法について解説をしてきました。損益分岐点を下げて、官民の支援を受けながら売り上げを確保する。市場が伸びているデリバリーやテイクアウトへの参入を検討する――といったことです。

ここで、老婆心ながら、対症療法として売り上げを確保する際に、やってはいけない方策について補足しておきたいと思います。

お得感だけを前面に出した、安易な販促に手を出すことは避けてください。コロナの初期段階では、低価格の飲み放題で集客を図った居酒屋にお客様が押し寄せました。しかし、今、そのようなやり方をしたら、「自分の店の利益のためだけに頑張るんだね」と、お客様や地域から店の姿勢を疑われかねません。下手をすると「こんなに店を混雑させて、感染を広げる気か」と、自粛警察の標的となってしまいます。一時的な売り上げを手にできるかもしれませんが、店の信用を失っては本末転倒です。

そうではなくて、例えば、「免疫力アップのメニューをご用意しました。体力をつけてコロナ禍を乗り切りましょう」といったメニュー提案をすれば、お客様に「いろいろと窮屈な中で、私たちが元気になる方法を考えてくれているんだな」と感じてもらえます。店が生き残らなくてはならないのは事実ですが、自分さえ助かればいいという独善的な姿勢では、お客様の共感を得ることはできません。この点をはき違えないようにご注意ください。

未来日記をつけよう

今度は、店の将来に目を向けましょう。当面の売り上げ確保と並行して、アフターコロナの店舗運営について考え、準備ができる項目については今のうちから準備を始めなくてはなりません。

アフターコロナの経営環境とはどのようなものでしょうか。

新型コロナウイルスのワクチンが普及してアフターコロナの時代になっても、急にバブル景気がやって来るわけではありません。今は不景気。アフターコロナも当面は不景気のままです。しかも、テレワークの普及で、会社員がオフィスに出勤する日数はコロナ禍前よりも減るはずです。仮に出勤する人の数が半分になるとすれば、ランチをとるために街に出る人の数は半分ですし、夜、繁華街に繰り出す人も半分です。

その中で、自分の店が選ばれるようになるために、何が必要となるのかを考えましょう。商品とサービス(接客)と店作り。この3つについて、選ばれる店になるために「今、できてないこと」は何なのか。そして、「今、できていて、さらに発展させられること」は何なのかを考え抜いて書きとめるとともに、向こう5年間、あるいは3年間の目標売上高や客数、客単価などの計画を記していくのです。

要するに、中長期の事業計画を立てるのです。ただし、それでは無機質でとっつきにくい。前向きな感じを出したいところですので、私は「未来日記」と呼んでいます。先ほど挙げた商品、サービス、店作りのうち、サービスについてはコロナ禍の現在は身動きを取りづらい状況です。非接触が推奨される時代に、お客様との接触のことを一生懸命考えてもあまり益がありません。店作りも同様で、パーテーションの設置、ソーシャルディスタンスのレイアウト、換気といった対処のほかは、今は考えなくてもいいと思います。

2022年の日記帳のイメージ写真

「どのような商品で突き抜けるか」を考える

ただし、商品については今からするべきこと、できることが多いはずです。第1回でお伝えしたように、アフターコロナのライバルは生き残った店ばかりですので、料理が美味しいのは当たり前です。お客様にしても、外食頻度が減り、収入によっては自由に使えるお金も減っていますから、「せっかくの外食で、絶対に外したくない」と考えます。こうした状況で他店から抜け出し、お客様に選んでもらうための「人を呼べる看板商品」を考えるのです。

今後、ただのレストラン、単なる居酒屋では、お客様を呼べなくなるでしょう。「うなぎの串が美味しい居酒屋」「ハンバーグの肉が美味しい洋食店」などといった、特徴のある看板メニューを作る必要があります。

すでに強い看板メニューがあるのなら、それを、より粘着性の高い、突出した看板メニューに発展させる方法を研究し、アイデアを未来日記に書き込みましょう。「インスタ映え」でも、食材の希少価値でも、ボリュームや調理法でも構いません。「うちの店に、このメニューあり」と宣言できる、突き抜けた商品を考えましょう。

「そんなメニューは思いつかないよ」とあきらめないでください。検討の材料を集めましょう。手掛かりはいくつもあります。例えば、当たるメニューは必ずマスコミが取り上げます。テレビのグルメ番組を見ましょう。情報誌も手にとってみてください。「どうせ〇〇だから」と斜に構えたところで、誰も得をしません。自店のメニューに生かせる部分はないかとアンテナを張り、他店のメニューを見ていくうちに、何らかの手掛かりを得られるはずです。

また、商品開発では、大きな流れを読むことも大切です。長い時間軸で、将来、どのようなメニューが支持されているかの傾向は分かるものです。子どもたちに好きなメニューのアンケートをして、上位に入るメニューは、10年後、20年後も残ります。食べ慣れた好物は強い。

子どものころにカップ麺を食べて育った人たちが30代、40代になっているから今もラーメンが人気なのですし、家族客はファミリーレストランよりも高い頻度で回転寿司を利用しています。これらの分野が将来も残ることは間違いないでしょう。

少し横道に逸れますが、前回、「化粧をして、着替えるのは億劫だから」との理由でデリバリーを利用する層が出現している話をしましたね。これも、アフターコロナの新様式として定着するはずです。デリバリーを日常的に利用する20代、30代は、10年後には30代と40代になって消費の中心にいます。ということは今からデリバリーを手掛ける意味があるはずです。

石田義昭の写真

今こそ、産直を検討してみる

商品で突き抜けるための視点を、もう一つご紹介します。仕入れについてです。コロナ禍の今だからこそ、産地直送を始めてみてはいかがでしょうか。伝手をたどって農家や漁師、その関係者を紹介してもらいましょう。知り合いがいなければ、産地に足を運んで交渉してください。コロナ禍で、今は産地も売り先に困っています。わざわざ声を掛けてきたり、足を運んできたりする相手をぞんざいに扱うことはないはずです。

産直は、段ボール1箱、あるいはトロ箱で1箱分を定期的に取り寄せることから始めましょう。鮮度の良い食材の仕入れが可能になるだけでなく、規格外の野菜や果物なども安価に仕入れられるかもしれません。漁港に行けば、セリにかからない地魚が並んでいます。小さな店だからこそ、こうした数がまとまらない、不ぞろいな産地の食材も有効活用できます。「規格外のやつも、出たときでいいので送ってください」とお願いしておくと、契約をしている食材と一緒に送ってもらえるでしょう。

特定の産地と付き合いを続けると、思わぬ食材に出合い、メニュー開発の幅が広がると思います。農産物の場合、自治体や農協、地元の大学などが、形や色、糖度、食感、食べやすさなどの面で付加価値の高い品種の開発や普及に取り組んでいます。

野菜は2019年度までに1846品種が農林水産省に登録されていますが、3分の1以上に当たる695品種が、平成20(2008)年度以降に登録された新種です。果物(果樹)は1430品種のうち443品種、きのこ類も492種のうち127品種が、平成20年度以降の登録です。競合店が入手困難で、お客さまも一度も口にしたことのない、独自性の高い食材を使ったメニューを自店の売り物にできるかもしれません。

産直食材・野菜

思い詰めずに生き残りましょう

突然訪れたコロナ禍という理不尽な状況でも気持ちを切らさず、対症療法と将来への備えに同時に取り組むのは、負担が大きいと思います。ただ、それは経営者である以上、避けて通れない試練です。やり切れた人の中から、「ピンチをチャンスに変える」人が生まれてくるのだと思います。

今の話と矛盾するようですが、こんなメッセージもお伝えしておきたいと思います。この連載を読みながらも「今月の支払いで頭がいっぱいだ」という人も多いはずです。店舗指導の経験上、真面目な経営者であればあるほど、「人様に迷惑をかけてはいけない」と思い詰めて、メンタルをやられてしまいがちです。辛いときは時に弱音を吐いて、自分を追い込まず、他人の力を借りることも考えてみてください。

気持ちを逃がしながら、ご自身がまず、生き残ってください。気持ちが落ち着いてきたら、また歩き出しましょう。ご健闘を祈ります。

講師紹介

株式会社FBA代表取締役 フードビジネスコンサルタント
石田義昭(いしだ・よしあき)
経営コンサルタント歴30年。「無敵の飲食店づくり」をテーマに経営支援を全国で行なっている。「顧客誘導と飲食店経営」を理論体系化し、顧客心理に訴える具体的な戦術指導には定評がある。3~5坪の小さな店から大型店まで、直接指導店舗数は1,500店を超え、顧問店の中から超繁盛店・多店舗展開企業などを数多く輩出している。USJ隣接の商業施設「ユニバーサル・シティウォーク大阪」内「風神雷神」、東京ドーム「ラクーア」飲食施設、大洗リゾートアウトレット飲食施設など大規模な商業施設のプロデュースも手掛ける。

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